セルビア出身の鬼才バイオリニスト、ネマニャ・ラドゥロヴィチ。そのファンタスティックな風貌と独特のセクシーさで、バイオリンの世界に新たなエロスを吹き込んでいる。レザーパンツ、ロングヘアという彼のスタイルは、写真からでもその芸術性を感じさせる。彼の音楽に触れると、その独特の魅力に引き込まれる。特に、パガニーニのカプリース24番を演奏する彼のバイオリンは、映画『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』を彷彿とさせる。彼の音楽は単なる音楽を超え、感覚を刺激し、心を揺さぶる。ネマニャのバイオリンは、エロスを音に変える魔法のようだ。この記事では、その魅力に迫ります。
ネマニャ・ラドゥロヴィチという名の表現力お化け
音にエロスを宿した魅惑の鬼才バイオリニスト、ネマニャ・ラドゥロヴィチ。
ファンタスティックな風貌をしたセルビア人である。そして私の心を掴んで離さない魅惑のバイオリニストである。
ネマニャと名前を聞いてピンとくる人はかなりのクラシック通なのであろう。
もしくは、私の出身地である横浜の野毛に、このネマニャの名を冠したカクテルバーがあるらしいので、そちらの常連さんであるのだろう。
レザーのスキニーパンツにエキゾチックなロングヘア。細身の身体つきでスラッと長い脚。いかにも芸術の類の何かをやっていそうだとわかる風貌にして、バイオリンを持っている出立ちがとてもセクシーな彼。
何か天性のものを持ち合せていそうな雰囲気が写真から漏れ出している。唯一無二とはこういう存在のことを言うのであろうと思う。どのアルバムのジャケット写真を見ても、総じてアーティスティックな印象だ。
そう思いながらiPhoneの再生ボタンを押すと、一音目から私は彼の虜になっていた。いかにも美しいバイオリンというのは耳馴染みがあったが、一音の表現力がこんなにも爆発しているバイオリニストは初めてだった。岡本太郎の絵を初めて見た時のようなパワーを感じた。
目から耳からエロスの全方位攻撃にまんまと惚れ落ちる
ジャケット写真を通して視覚から入ってくる情報によって、この一音目の威力が最大化されていたことは間違いない。
しかし、それにしても音のイメージがビタっとハマる感覚がある。写真に写るスタイルと耳に伝ってくるメロディとが寸分の狂いもなく、ドンピシャなのだ。目と耳の合致したイメージが、より深く没入感を持たせてくれる。別の言い方をすればストーリーに一貫性があるということだろう。どの扉を開けても「エロス」が漂っている。
しかしながら、私は何も見た目から入ったわけではない。様々な一流バイオリニストのパガニーニの名曲カプリース24番を聴き分けしているうちに、ネマニャの音にまんまと惚れ落ちてしまったのだ(あくまで所詮デジタル音越しでしかないが…)。
ネマニャを引き寄せた超絶技巧のカプリース第24番
映画『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』という映画がある。19世紀前半のイタリアの伝説的なバイオリンプレーヤーであるニコロ・パガニーニの半生を描いた伝記映画である。現代のパガニーニとも言われるデイヴィット・ギャレットが主演と制作総指揮を務めているのだが、随所にバイオリンプレイが盛り込まれ、まるでライブ会場の映像を観ているかのような映画となっている。
「愛と狂気のヴァイオリニスト」と名付けられたサブタイトルからも察することができるように、波乱に満ちたパガニーニの半生にも興味がそそられるが、中でも映画のハイライトである「カプリース24番」のシーンは鳥肌級であった。
もっとこの音楽を身体に染み込ませたいと感じた私は、映画を観た後即座にApple Musicを開き、「Caprice 24」で検索し、片っ端からさまざまな演奏者のカプリース24番を聞いていった。超絶技巧を有する者しか弾くことができないが故にプレーヤー数こそ少ないが、そうしてネマニャと出会うことができた。
音楽表現ほど心を揺さぶるものはない。古の時代から、酒を飲み、音を鳴らしながら愉悦に浸るという文化は不変なものとして私たちの身体に記憶されている。それを抜きにしても、私はありとあらゆる芸術ジャンルの中で、音楽が最も人を昂らせる効能のあるものだと思っている。
ネマニャのバイオリンには心を揺さぶられるパワーを感じる。そして、エロスが宿っている。
色気を音にするとこうなるのかと、妙に考え込んでしまう自分がいる。